痴漢抑止活動センター代表メッセージ 代表 松永弥生

電車内痴漢問題は、首都圏をはじめとした大都市に集中した都市型の社会問題と言えます。2001年に京王電鉄が、女性専用車両を導入したのを皮切りに、各社で対応が進みました。しかし、痴漢犯罪は以前として起こっています。
理由の一つには、痴漢犯罪の被害者となっているのが、女子高校生や中学生であることがあげられます。都内の女性専用車両は、朝のラッシュ時と夜の遅い時間しか運行されていない路線が多いのです。女子中高校生が下校する時間帯の女性専用車両がないため、被害を免れるためには自衛するしかないのが現状です。
一方で、被害者が声を上げづらい犯罪である点も看過できません。警視庁が発表した痴漢犯罪の件数は3880件(平成23年/電車内痴漢以外も含む)ですが、これは被害届けが出された件数に過ぎません。警察に届けるどころか、親にも言えずにいる子どもたちは多く、実際の事件は10倍以上に上ると専門家は述べています(*1)。
痴漢被害の状況が表面化しないのは、今に始まったことでありません。
私たちのサイトには、多くの元被害者からの声が寄せられています。その中には、当時、恐怖と羞恥心で何も行動できなかったことを伝えるにとどまらず「自分が泣き寝入りしたために、今も同じように被害にあっている子供たちがいると思うと、責任を感じる」という切実なコメントも複数ありました。
被害者が、心の傷を負うだけではなく、10数年~数十年経ったのちに、自分を責め続けています。それほど被害者に大きく傷つける犯罪であることが周知されていません。
従来の痴漢防止策は、被害にあう側に自衛するように求めるか、「痴漢にあったら勇気を出して声を出して」のように“被害にあうことが前提”となっていました。
自衛に関しては、短すぎるスカートやハデな服装を慎むように促されますが、実際に痴漢被害にあっているのは、校則どおりに制服を着用している真面目でおとなしいタイプが多いという報告があります。痴漢常習者は、「おとなしく声をあげないだろう」というタイプをターゲットにするためだからです。
また、痴漢にあったときに声を上げるのは、大人であっても難しいものです。社内のセクハラや、パワハラを勇気を出して告発できる人がどれだけいるでしょうか? それを考えれば、大人からわいせつ行為をされている子供に「勇気を出せ」と要求するのは酷でしょう。
そうした現状を鑑みるに、被害者の努力だけでは痴漢犯罪件数を減少させることができないのは自明の理でといえます。
そもそも、被害者たちは、痴漢被害にあって加害者を捕まえたいとは考えていません。単に「痴漢されたくない」。それだけです。
痴漢加害者が痴漢しにくい環境、痴漢を許さない社会の空気を作り出すことが、電車内痴漢犯罪を減少させるために必要です。
そのためにも子どもたちが被害にあう前に、痴漢犯罪に対して、自ら「NO!」を主張できる仕組みづくりと、それをサポートする周囲の大人や社会のネットワークを作りたいと考えています。

※女性専用車両の導入現状
※首都圏、大都市圏の女子数