社会が、大人が痴漢から守るから、立ちあがれJK!

プロジェクト代表 松永弥生

#立ちあがれJK のパッケージには、
プロジェクトの思いである
「社会が、大人が、痴漢犯罪からあなたたちを守るから、安心して立ちあがれ」
という思いを込めています。
1484104_829705743840255_2073967493034180990_n
パッケージのキャッチコピーだけでは、伝わらない部分も多いので、一度、プロジェクトの思いを整理して伝えたいと思います。

商品名である痴漢抑止バッジの文字は、あえて小さすぎるサイズにし、「#立ちあがれJK」と大書きしたパッケージは、世代によって受け止め方が違うだろうと予想していました。

なぜなら、最終的にこのパッケージに「GO!」を出したプロジェクトリーダーの私自身が、決定を下すまでに逡巡し悩んだからです。

けれど、私達が痴漢抑止バッジを使ってほしいと考えている女子中高生にとって、「立ちあがれJK!」がポジティブに受け止められるワードならば、このパッケージでいこう! と決意をしました。

Stop痴漢バッジプロジェクトの発足

Stop痴漢バッジプロジェクトは2015年の夏に起案しました。クラウドファンディングで支援を、クラウドワークスでデザインを募るための記者会見を行ったのは同年11月です。

この時点で、私が考えていたのは、
「女子高校生が自分の体験から考案した“痴漢抑止バッジ”を多くの人に知ってほしい」
というシンプルなものでした。

・彼女がこのバッジを考案した知恵と、実際に自分でつけて痴漢を退けた勇気を認めてくれる人がいたら、嬉しい。
・とてもいいアイデアだから、同じように困っている人にバッジを届けたら役に立つだろう。
・バッジをつける子がいれば、彼女は1人で痴漢と対峙しなくてよくなる。彼女に仲間ができたらいいな。

この3点です。

痴漢抑止バッジの考案者親子は、1年以上の間、自分達でできることは全てやり「同じように困っている人と、会ったことがなかった」から、このバッジが世間に受け入れられると思っていなかったと言います。

だけど私は、「少数かもしれないけど、必要としている子は必ずいる」と考えていました。その少数に届けばいいと願って始めたプロジェクトでしたが、思いがけず、多くの方から共感と支援と応援をいただきました。

ネット通販だけではなく、店販が目標

クラウドファンディングは3ヶ月という短い期間でしたが、かなり初期に私達は、気付かされました。

支援金でバッジを1~2000個作って配布するだけでは、このプロジェクトは終われない。1度バッジを配っただけでは、問題提起にもならない。この活動は、継続する必要がある。

当初は、クラウドファンディングのリターンと無料配布イベントを行った後は、必要とする人にネット通販で細々と痴漢抑止バッジを届ければいいと考えていました。けれどそれでは、必要としている女子高校生、中学生には届かない。広く普及させるために、店販を視野にいれたいと考えるようになったのです。

もちろん、私達には商品作りのノウハウはありません。全くの未経験です。

それでもパッケージとネーミングが重要であることは、素人ながらに判っていました。「痴漢抑止バッジ」では、店頭に並べられた時に売れないだろうことは、カンタンに予測がつきます。

マーケティングのプロではないので、たくさんの意見を集められたわけではありませんが、可能な限り努力して、バッジを使ってほしい10~20代の女子にヒアリングをしました。

「痴漢抑止バッジ」に替わる名称も考えましたが、大人の反応はともかく、女子中高生や大学生からは瞬殺されました。

「痴漢と書いてあるだけで、イヤ」。もっともな意見です。

・ポジティブな言葉がいい
・女子高校生や女の子は、仲間意識を大切にする

そんな意見の中から出てきたのが「立ちあがれJK」でした。

女子カルチャーを牽引するのは、JK!

JKは、josi koukouseiの頭文字で、女子高校生を表しています。
ネット業界に30年いる私は、この略語がネットスラングから誕生したことを知っています。だから、印象のいい言葉ではありませんでした。

ただ、若い彼女達が会話の中で、「JKが、JCが」と言っているとき、そこにネガティブなイメージは含まれていませんでした。そして、「JKの中に、JFとJLがあって~」と説明された時は、「えっ? 初耳」と驚いたのです。それぞれ、F:fresh、L:Lastで1年と3年を指すそうです。その後、ネットで検索してもヒットしません。私に教えてくれた子達の、仲間内での用語なのかもしれません。

略語をさらに細分化して、自分達にしか通じない派生を作るほど、彼女達は、JKという言葉を自分達のモノにしているんだと思いました。

「立ちあがれJK」は、確かにキャッチーで面白い。だけど、対象は高校生だけではなく、中学生も、小学生も含まれます。もちろん、女子大生もOLも。

JKだけじゃなくて、JC、JSも列挙した方がいいのかなぁ……と、私が逡巡した時は、「必要ない」と即答されました。

「JKの間に流行れば、JCがマネをする。JCが使えば、JSがついてくる」というのが理由です。続けて、
「JKは、すぐに大学生になって、OLになる」
「だから、JKを押さえておけば、大丈夫」

数年先も見据えた意見(しかも、計算ではなく直感で発せられた)に、舌を巻きました。

彼女達は、“女子高校生”という自分達に自信を持っている。女子カルチャーを広げているのは、“JK”と呼ばれる自分達なんだという自負があるから言えるコメントだと感じました。

言葉は生き物です。語源がどうであれ、時間とともに、ニュアンスや用例が変化するのは当たり前です。

女性をモノ扱いするような人たちが、女子高校生をJKとラベリングしましたが、当の彼女達が、そのラベルを自分達の“ブランド”として活用しているというのが、私は面白いと思いました。

人によって、受け止め方はさまざまでしょうけれど、名付けたものの思惑を無視して、女子高校生が立ちあがり、JKを旗印に仲間で集まって自己主張をするのは、私的には痛快です。

それでも「JK」の持つイメージに不安がぬぐえない私は、女子高校生が愛読している雑誌で、JKというワードがどのように扱われているかもチェックしました。「JK必読!」といったコーナーが設けられているなど、ここでもポジティブな使われ方をしているのが見て取れました。

JKの語源に拘ってしまうのは、私のような古い世代なのかもしれません。当の女子高校生達は、JKを3年間限定で与えられたブランドとして、肯定的に受け止めているように思います。

10代の女子に、防犯教育が必要

従来の痴漢対策は「痴漢にあったら、勇気を出して、声出して」のコピーに現れているように、痴漢にあうのが前提でした。

だけどこれは、おかしいでしょう。

私たちは、痴漢被害にあって、痴漢を捕まえたいわけではありません。

もちろん、痴漢にあったときに、勇気を出すのは大切です。そして痴漢に対峙し、二度と同じ犯罪を起こさせなくできるのなら、それはいいことです。でも、本当に望んでいるのは、そこではありません。

痴漢を撃退するのではなく、痴漢にあいたくない。それだけです。

その思いを込めて、私達は“痴漢撃退”ではなくて、“痴漢抑止”の名称を使っています。

痴漢にあわないために、女性専用車両を使う、使用する路線や時間帯を変更すればいいという意見がありますが、残念ながら現実的ではありません。

女性専用車両がない路線や、時間帯は多く、どの路線や時間帯でも痴漢犯罪が起きているからです。

「#立ちあがれJK!」と描いたパッケージの2面3面には、痴漢被害を少しでも防ぐためのマニュアルをイラストで記載しました。警察が配布しているマニュアルを参考にして作ったものです。

IMGP3958

被害にあいやすい10代の女子にむけて、このようにバッジやマニュアルで、防犯意識を持つように促すことについても、ネット上で疑問の声をあげる方がいます。

「悪いのは犯罪者なのに、被害者に自衛を強いるのは間違っている」という論旨でした。

もちろん加害者が悪いのは異論がありません。けれど、被害にあわないように自衛するのは、性犯罪に限らず当然です。

幼児には、
「知らない人からお菓子をもらっちゃダメ」
「お母さんが呼んでいるって言われても、車に乗っちゃダメ」
と繰り返し教えるでしょう。

高齢者には、
「振り込み詐欺が多発しています」
「郵便で現金を送れは、詐欺です」
「ATMで還付金は戻りません」
と、警察が繰り返し注意を促します。

駐輪場では、
「盗難予防に、自転車は二重ロックを!」
と張り紙があります。

それなのに、初めて電車通学を始める中学生や高校生に、
「ラッシュ時の電車は、痴漢犯罪が多い」
「ドア付近は被害にあいやすい」
「おかしい! と思ったら、すぐにイヤだという意思表示をしなさい」
と、事前に防犯教育をする家庭は少ないのが現状です。

私はこれまで、被害にあった人から体験談を聞いてきましたが、痴漢被害を親に報告したという話しは、考案者母子以外から聞いたことはありません。

また、母親から痴漢に気をつけるための具体的な身の守り方を教えられたというケースも聞いたことがありません。

性の問題はデリケートで、家庭によってどの程度オープンに会話ができるかは、幼児の時からの働きかけによっても違います。

#立ちあがれJK! とポジティブなメッセージでパッケージングされた痴漢抑止バッジが、親子の間で痴漢被害から身を守るためのノウハウを共有するための糸口になればと願っています。

社会が、大人が、痴漢犯罪から子ども達を守る

私は、SNSに投稿された「痴漢は犯罪です」「私は泣き寝入りしません」と大きく書かれた手作りカードをつけて登下校している女子高校生の写真を見たときに、誰にも甘えずに毅然として立つ後ろ姿に圧倒されました。

同時に、「高校生の少女が、たった一人でこんなことをしなくちゃならないなんて……」とたまらない気持ちになりました。

「私は泣き寝入りしません」

そのメッセージを示すだけで、自分に向けられてきたいわれない悪意を全て退けた彼女の勇気。私は、それをすごいと思ったけれど、もし自分が彼女だったら同じことはできないでしょう。

これまで誰もやらなかったことを、一人でやっている高校生の存在に驚愕したのです。同時に、これを彼女1人の行動にとどめておいてはいけないと感じたのです。痴漢にあっている他の子達も同様に意志を表明すれば、被害を受けずにすむからです。

プロジェクトには、「痴漢被害にあって、困っていても、泣いていても、勇気を出しても、助けてもらえなかった。あの時の絶望を今も覚えている」という声が寄せられています。そんな思いをしたことのある女性は、他にもいるでしょう。

他には、「昔、痴漢にあったとき、泣き寝入りしました。今も、少女達が同じように辛い思いをしているのなら、行動を起こさなかった私の責任です」というコメントが複数、届いています。

もちろん、今起きている痴漢犯罪が、昔、被害にあった女性達(私自身も含みます)の責任であるわけがありません。けれど、そう思ってしまうほどに、痴漢被害者は傷つけられています。

文献を辿れば、電車内の痴漢犯罪は1920年代から起きていたことが判ります(*1)。衆人の中で起きる犯罪が、これほど長い間、解決されずに来たのはなぜでしょう。

私達は、いつまでこの状況を看過していくのでしょうか?

社会が、大人が、本気になれば、電車内の痴漢犯罪はなくなるはずです。

痴漢抑止バッジが店頭に並ぶのも、社会が本気で痴漢問題に取り組む姿勢を示す手段です。パッケージの4面には、プロジェクトに協賛する企業からのメッセージが掲載されています。

私達は、痴漢被害にあっている子ども達に、犯罪者と立ち向かえと言っているわけではありません。

「痴漢にあいたくない」
「私の体に、無断で触れないで!」

と宣言していいと伝えているのです。

社会が、大人が、あなたたちを痴漢犯罪から守ろうとしています。
だから、安心して、立ちあがれJK!

小さなアクションで社会の課題を解決。#立ちあがれ大人!

Stop痴漢バッジプロジェクトは、個人的な思いからスタートしました。自分たちができることをやってきました。思いがけずメディアに大きく取り上げていただきましたが、行っているのは、メッセージを描いたバッジを作って誰かに使ってもらおうという小さな活動です。

元々、私達はこの痴漢抑止バッジが全ての方に受け入れられるとは考えていませんでした。バッジがなくても加害者に「NO!」を言える子もいるでしょうし、バッジをつける勇気が出せない子もいるでしょう。

これまでに例のない試みですから、私達の活動のあり方に、疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

実際、たくさんの共感や応援の声とともに、新たな提案やご意見もいただいています。プロジェクトがきっかけで、痴漢問題の解決について考え始めた方が増えていることを嬉しく思っています。

疑問や不安、改善点も含めて、多くの方が痴漢問題に対して意見を交わし、被害件数を減らす具体的な案を出し合っていければ嬉しいです。

私達は、小さな団体です。これまで、社会活動をした経験もなく、資金も、人手もありません。

寄せられたご意見にすぐに対応できないこともあります。ご提案に答えられないケースも多々あります。そんなときに願うのは、ご提案くださった方が私達と同じように小さく行動を起こしてくださったらいいなということです。

ネットを通じて情報を発信し、SNSで共感を集められる時代です。活動資金が必要ならば、クラウドファンディングで支援者を募ることも可能です。

考案者母子がアイデアを形にしてSNSに投稿したから、Stop痴漢抑止バッジプロジェクトは生まれました。

そんな風に小さなワンアクションが、問題解決の糸口に繋がるかもしれません。そんな活動がいくつもいくつも生まれて、社会の課題が少しずつ解決に向かいますように。

#立ちあがれ大人!


*1) 「痴漢」の文化史 : 岩井茂樹 著 – ‎2014

関連記事